ICCEES参加記 菅井健太 東京外国語大学大学院 / ソフィア大学“聖クリメント・オフリドスキ”


 

日本スラヴ学研究会からご支援いただき、2015年8月3から8月8日にかけて幕張で開催されたICCEESの第9回世界大会に参加した。

この大会に参加するきっかけは、ICCEESの大会が初めて日本で開催されるということで、一年以上前から様々な学会で紹介されており、これらを通して得た情報から漠然と関心を持ったためである。関心は持ったが、ちょうど開催される時期には国外で留学している予定であったため、実際に参加することをすぐに決めたわけではなかった。しかし、世界中から多くの研究者が集まって日本で開かれる大きな規模の国際会議は滅多にない機会であるということで、参加を検討することにした。少し調べてみると、参加形態としてパネルセッションがあり、共通のテーマで複数の研究発表を行い、そのあとで討論者を交えてディスカッションを行うということであった。今まで、個人研究発表の機会はあっても、このような形式での研究発表の経験がほとんどなかった。それに加え、多かれ少なかれ近いテーマに取り組んでいる日本国内外の研究者の方々と一緒にパネルを組んで議論できれば、学術的な点でも、また研究交流の点でも有益となるであろうと考えた。そして、同じ南スラヴ語を研究している方々と声を掛け合い、参加をすることに決めた。

 パネルは、„Exploring Various Aspects on Studies of South Slavic Verbs“というテーマの下で、それぞれの研究発表を行うことにした。参加申請に際しては、研究発表を行うパネリストの4人が顔合わせをしたり、討論者と司会の先生方が決まった後もメールなどを通して綿密に連絡を取り合い、一年近く断続的に準備を進めた。

 大会の日時が迫ってくると、公式ホームページ上で、全体のプログラムが発表された。それを開いてみると、まずプログラムに掲載されたパネルやラウンドテーブルのセッションの多さにとても驚いたのを覚えている。このICCEESの大会の規模がかなり大きなものであることはすでに知っていたし、大会日程はまるまる一週間となっていることからもある程度は想像しいたものの、その想像をはるかに超える規模であることがはっきりわかった。実際、プログラムが正確に何ページにわたっていたのかはよく覚えていないが、一通りプログラムに目を通すということがそう簡単にはできないほどのものであった。自分が参加するパネルを探したときに、パーッと見ているだけで見つけることはできず、オンラインプログラムではパソコンの検索機能を、後にいただいた冊子上のプログラムでは巻末索引にお世話になった。それでも、自分のパネル以外にも、関心のある研究発表やパネル・ラウンドテーブルなどがあるかもしれないので、時間のある時に少しずつ目を通してみた。そうすることで、この大会が取り扱う研究分野がいかに広範囲であり、またいかに多種多様な国々から研究者が集まるものなのかが改めてうかがい知ることができた。

さて、私たちのパネルは、8月6日(木)に予定されているということがわかった。これに備えて、大会の数日前には留学先から一時帰国をし、すでに準備していた発表原稿のほかにプレゼンテーション資料の作成を行いながら、当日に向けて最終的な準備を進めた。日本に戻ると、留学先とは異なったその蒸し暑さに悩まされた。8月6日当日に会場に向かったのはまだ昼前の時間であったが、すでに太陽が強く照りつけるていた。海浜幕張駅から会場の神田外語大学まで徒歩で向かったが、会場に到着するまでにすっかり汗だくになってしまった。ちゃんと事前に調べなかったのだが、無料送迎バスも運行していたのことだったので、それを利用すべきであったとあとで悔やんだことを思い出す。

会場に到着すると、会場入り口の受付付近には事務を担当している方々に加え、多くのボランティアの方々が、資料の配布や英語・ロシア語などでの案内を行っていた。飲料水のペットボトルも自由に持っていけるようになっていた。すっかり汗だくでのどの渇きもピークに達していた私はありがたくそのペットボトルを一本いただいた。その後、発表の前後に、会場内や休憩所を歩き回っていると、実に様々な言語が聞かれた。それだけ多くの海外の研究者の方が集まってきているということである。会場のいたるところで、海外の研究者の案内をするためにICCEESの幕張大会のTシャツを着た人々が忙しそうに動き回っていた。その中には、知り合いの大学院の同僚たちの姿も多く見かけたほか、詳しくはわからないが、地元の千葉県の一般市民のボランティアの方もいたように見受けられた。日本の学会関連の方々や研究者たちだけではなく、地元自治体なども、大会にあわせて来日した海外の研究した方々をおもてなししようと取り組んでいるようであった。

私がパネリストとして参加したパネルのセッションは、比較的小さな教室で、数名のオーディエンスの方々も加えて行われ、無事に終えることができた。討論を担当してくださった先生をはじめ、ありがたいことに、会場にいたオーディエンスの方々も積極的に質疑応答などを通して積極的に参加してくださり、発表後の討論は非常に充実したものとなった。パネル終了のあとには、パネルに参加した発表者や先生のほか、その場にいた海外のオーディエンスの方も加わり、会場内のレストランで昼食を共にした。まったく初めて会った方々であったが、自然の流れでそのような交流ができたことは、純粋に楽しかったし、そのような形で生まれたつながりもとても有意義であった。

 私は今回、このパネル以外にももう一つパネルにかかわらせていただいた。それは、自身が発表者として参加したパネルの翌日の8月7日(金)に行われた„Grammatical and Contextual Analysis of Russian and Other Languages“である。こちらは討論者としての参加であった。当初は予定になかったが、大会の開催の一ヶ月ほど前になって、オーガナイザーの方から依頼を受け、一緒に南スラヴ語のパネルに参加した同僚の院生と共同で担当するということで、討論者を引き受けることになった。自身の研究発表の準備の傍ら、パネリストの方が準備された事前原稿に目を通して準備を行った。討論者をしたことがなかったので、自分でつとまるかどうか不安もあったが、こちらも無事に終えることができた。研究発表に対するコメントを外国語でするような機会はめったとなく、私自身にとっては非常にいい経験と勉強になった。

 直接かかわらせていただいたパネル以外にも、関心に応じて、他の様々なパネル・ラウンドテーブルなどもオーディエンスとして参加した。今大会がカバーする分野が広範囲であることから、自分の関心にあわせていろいろと顔を出してみた。ロシア語教育に関するラウンドテーブルや言語風景やウクライナ情勢に関するパネルなどをまわった。今まで知らなかったような研究や分野を知ることができたり、また最新の研究動向を知るのにも役に立った。

国外で開催される国際会議と異なり、今大会は日本開催であり、多くの日本人研究者が参加し関わっていることから、“インターナショナル”な雰囲気のなかにも、“日本”的な部分を多く感じる会議であった。日本開催ということと、多くの日本人研究者が参加したのだから、それは当然ではあるのだが。私が今まで参加した国際会議では、私が対象としている分野を研究している方があまり日本にいないということも関係しているのであろうが、日本勢、しいてはアジア勢は常にマイナーであり、その会議全体で私一人しかいないようなことは珍しくなかった。しかし、ICCEESの幕張大会は、たくさんの海外の研究者と日本の研究者が参加し、互いに研究交流が行われていたという点において、まさに„many wests meet many easts“という標語通りのものであったのではないかと感じる。