ICCEES幕張大会に参加して  岡野 要


 

2015年8月3日~8日の6日間、幕張メッセおよび神田外語大学において第9回国際中欧・東欧研究協議会世界大会(以下―ICCEES)が開催された。ICCEESの世界大会は5年に一度開催され、毎回開催国が持ち回りで交代するが、9回目となる今回の大会の開催地は日本の幕張であり、ICCEES世界大会がアジアで開催されるのは初めてのことであった。

ICCEES世界大会は、3日に開会式を迎え、4日から最終日の8日まで毎日セクションに分かれて世界各国から集まった東欧・中欧・ロシア・ユーラシア地域を専門とする研究者がそれぞれの研究成果の報告を行った。50を超える国から1500人を超える参加者がエントリーした、ICCEES史上でも歴代2番目の規模という今大会に参加できたのは、駆け出しの研究者としては喜ばしい限りであった。

企画されたパネルおよびラウンドテーブル形式のセクションは政治、経済、歴史、文化、文学、言語学をはじめとする広範な分野にわたっており、これだけ多くの分野の研究者が集まっているため、同じ時間帯に20を超えるいくつものパネルまたはラウンドテーブル形式のセクションが行われていた。そのため、各セクションが終わるたびに、次はどのセクションへ行こうか毎日悩ましかった。

 

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我々の組織したパネル“Exploring Various Perspectives on the Study of South Slavic Verbs”は大会4日目となる8月6日の午後に行われた。このパネルでは筆者である岡野要(京都大学大学院/ノヴィ・サド大学大学院)、菅井健太氏(東京外国語大学大学院/ソフィア大学大学院)、エレオノラ四位ヨフコバ氏(富山大学)、サーニャ・ヨカ氏(東京大学大学院)の4人(発表順)が報告を行い、討論者は三谷惠子氏(東京大学)、チェアは堤正典氏(神奈川大学)が務めた。パネルの共通テーマは南スラヴ語の動詞研究であり、各報告者は自分の取り組む研究テーマに関する報告を行った。

1つ目の岡野の報告“Verbs of Oscillation in South Slavic: A case study in lexical typology”は、ブルガリア語、マケドニア語、セルビア語、スロヴェニア語における振動を表わす動詞の意味と分布の共通点・相違点を明らかにするものであった。2つ目の菅井氏の報告“Clitic Doubling of Objects in the Northeastern Bulgarian Dialect in Romania”は、現在のルーマニア領内で話されているブルガリア語の北部方言における接語重複の特徴を文法化の観点から分析したものであった。3つ目の四位ヨフコバ氏の報告“Imperfectivity and evidentiality in Bulgarian”は、ブルガリア語の未完了過去-l分詞と認識的モダリティの関わりを中心に論じるものであった。4つ目のヨカ氏の報告“Combinations of verbs and nouns in the accusative case in the Serbian language”は、セルビア語の名詞対格形を直接目的語にとる文型を名詞の意味と文型の関わりの観点から分類するというものであった。これら4つの報告の後は、討論者である三谷氏よりそれぞれの報告に対するコメントと質問があり、それぞれの報告者からの応答があった。続いて、報告を聞いていた聴衆からの質問に移り、報告者、討論者、聴衆の間で意見交換がなされた。聴衆には、スラヴ諸語を母語とする人、スラヴ系の言語を専門とする人、スラヴ系の他分野を専攻する人など数は少ないながらも多様なバックグラウンドを持った人が集まっていたため、様々な観点からの質問やコメントがあり、報告者それぞれにとって非常に実り多い時間となった。

報告者が3人を超えると、通常は討論のための時間がないラウンドテーブル形式でセクションを行うことになるが、我々のグループは申込みの段階で大会事務局に無理を言って報告者が4人のパネルを組むことを許可していただいた。セクションの時間は90分と定められているため、一人ひとりの報告の時間は短くなってしまったが、質問や意見交換のための時間を取れたことはパネルに参加した全員にとって意義のあることであったと思っている。

 

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 今回の第9回ICCEES世界大会への参加は、筆者にとって非常に有益で実り多いものであったと言える。これだけ大きな規模の国際会議に日本で参加できたこと、筆者の専門に近い研究者の方々と意見を交わせたこと、そして自分の専門と異なる分野の研究に従事している研究者と交流する機会を持てたことなど、6日間のなかに多くの新鮮で、刺激的な経験が凝縮されていた。また英語・その他言語での報告やパネルディスカッションの進め方など、国際会議での報告に関する技術的なこと関しても、学ぶことが多かった。すでに時間が経過し、ICCEES参加時の新鮮な印象は薄れつつあるが、この機会に感じ、学んだことを反芻しながら、今後の研究活動に活かしていきたいと思っている。