2012


1月28日(土)

 

日本西スラヴ学研究会25周年記念シンポジウム
「中東欧を〈翻訳〉する」

【日時】:2012年1月28日(土)14時~18時

【会場】:立教大学池袋キャンパス 太刀川記念館 3階 多目的ホール
 *キャンパスへのアクセス:

http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/direction/
 *キャンパスマップ:

http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/campusmap/

【概要】「もうひとつのヨーロッパ」とも称される「中東欧」。「西欧」と「ロシア」に挟まれ、二度の大戦と社会主義体制を体験したこの地域は、明確な定義を与えることのできない、きわめて緩やかな文化圏を形成している。だが冷戦体制崩壊から約20年が経過し、「ヨーロッパへの回帰」、「亡命文学の再検討」あるいは「オスタルギー」など、「中東欧」の文学そして文化をめぐる状況は著しく変貌を遂げている。このシンポジウムでは、「中東欧」の文学の翻訳に携わってきた翻訳者の方をお招きして、「中東欧」と呼ばれる文学を語る足場というものはどのようなものがあるか、「中東欧」の位相を多面的に検討する。

【プログラム】
第1部 中東欧を〈翻訳〉する(14:00~15:45)
・西永良成(東京外国語大学名誉教授):「中位のコンテクストとしての中欧」
・山本浩司(早稲田大学):「住むことの終わり――現代ドイツ文学にみる〈東欧〉」
・柴田元幸(東京大学):「北米から見える中東欧文学」

第2部 ラウンド・テーブル(16:05~18:00)
・上記パネリスト、沼野充義(東京大学)、奥彩子(共立女子大)他。

司会:阿部賢一(立教大学)


【共催】:立教大学大学院文学研究科比較文明学専攻

 

シンポジウム(2012.1.28)の報告

 

25周年記念シンポジウム「中東欧を〈翻訳〉する」(共催:立教大学文学研究科比較文明学専攻))が、2012年1月28日(土)、立教大学池袋キャンパス太刀川記念館にて開催されました。多数の方にご来場いただき、ありがとうございました。本シンポジウムの記録は、本会の『論集』(2013年3月刊行予定)に掲載される予定です。(阿部)


講演会(2012.3.8)の報告

 

2012年3月8日(木)午後4時より6時まで、早稲田大学早稲田キャンパス8号館501会議室において、科学研究費補助金基盤A「ヨーロッパ境界地域の歴史的経験とパトリア意識/市民権」(代表:篠原琢氏)と日本西スラヴ学研究会の共同主催のかたちで、下記の講演会が開かれた。

 

[講師]:Robert B. Pynsent (The School of Slavonic and East European Studies, University College London)

[講演題目]: A 1940 nationalist edition on a 1736 nationalist text

 

講師のロバート・B・ピンセント氏は、長年ロンドン大学スラヴ東欧研究学部で教鞭をとられ(現在は退職)、イギリスにおけるチェコとスロヴァキア文学研究の第一人者として広く知られた方である。一見したところ「謎かけ」のような講演題目は、バロック期のチェコ文学者O・F・J・デ・ヴァルトが、1736年に出版した説教集のテクストの一部を、チェコのバロック期文学の研究者ヨゼフ・ヴァシツァ(教会スラヴ語の専門家としても有名)が、ボヘミア・モラヴィア保護領期の1940年に再版したという史実を指している。このエピソードを軸として、文学テクストの政治利用という観点から、該博な知識に裏付けられつつ、チェコ文学史についての通説(バロック期の「暗黒(テムノ)」説)を覆す、まことに刺激的な議論が展開された。「アドヴァンスト・レベル向け」の高度な内容で、「温厚な英国紳士」を絵に書いたようなピンセント氏の、UCLでの講義を彷彿とさせるブリティシュ英語による講演と、それに続く質疑応答の2時間は、出席した7名のチェコとスロヴァキアの研究者にとって、得難い濃密な知的体験であった。なお本講演はピンセント氏の快諾を得て、『スラヴ学論集』の次年度号に掲載される予定であるので、ぜひ味読されたい。講演会終了は大隈記念タワー15階のレストラン「西北の風」で、午後9時すぎまで歓談が続いた。〔文責・長與〕

ピンセント氏との懇親会
ピンセント氏との懇親会

研究発表会

 

会場 北海道大学スラブ研究センター4階大会議室(両日とも)
日時 2012年3月15日(木) 13:30~18:15 《パネル発表》
    2012年3月16日(金) 10:00~12:15 《研究発表》

 

2012年3月15日(木) 《パネル発表》

 

13:30‐18:15 《パネル発表》: 東欧文学における「東」のイメージ

概要:本企画では「東欧文学」という古い枠組をあえて用い、同文化圏における「東」のイメージについて考察する。この地域の文化が、東西の空間軸における自らの位置づけについて常に意識的であり続けていることがそのひとつの理由である。「東」とは、西欧からこの地域に向けられる他者の眼差しでもありえるし、東欧自体が外部(ロシア、アジア)や内側(ユダヤ、ロマ)の東的要素を映し出す表象でもありうる。東欧文学における東のイメージを、「人間の移動」と「空間のイメージ」の二つの側面から明らかにする。第一パネル(移動の文学)では、阿部報告が東(旧ソ連地域)への移動、井上報告は西への移動、小椋報告は双方への移動を扱い、テキストにおいて東西の移動が持つ意味や機能を考察する。三報告の比較によって、移民文学や紀行文学を統合する「移動の文学」の可能性が浮かび上がるはずである。第二パネル(空間のイメージ)では、越野報告と田中報告がポーランド文学における東への眼差し(東部国境地域クレスィ、ユダヤ性)、奥山報告が西欧の読者に向けて書かれた東欧(ルーマニア)のイメージについて分析する。三報告を比較することで、東欧をめぐる「東」の空間的なイメージを明らかにしたい。

 

第一パネル「移動の文学」 13:30-15:30

コメンテーター:西成彦(立命館大学) 司会:越野剛(北海道大学)

 

報告者:阿部賢一(立教大学)

題目:「ヤーヒム・トポルの小説における〈移動〉の位相」

本報告では、チェコの現代作家ヤーヒム・トポル(1962)の小説『冷たい大地を』(2009)を題材として取り上げ、作品内における移動、とりわけ「東」への移動と变述の関係について考察を行なう。

 

報告者:小椋彩(東京大学)

題目:「オルガ・トカルチュクの『逃亡派』と新しい「紀行文学」について」

ロシア正教のセクト「逃亡派」にインスピレーションを得て書かれた長編小説『逃亡派』(2007)は、「移動」をモチーフにした100余りの断片から成る。2008年度ニケ賞を受賞した本作を中心に、トカルチュクの文学における「旅」「東西」「可動性」について検討する。

 

報告者:井上暁子(北海道大学)

題目:「地域の放浪、定位の旅——移動する作家ヤヌシュ・ルドニツキの文学における「場所性」」

本報告では、社会主義末期西ドイツへ移住し、冷戦崩壊後もドイツにとどまり創作を続けるポーランド人作家ヤヌシュ・ルドニツキ(1956-)の文学における、場所/地域の描かれ方について考察する。1990年以降に書かれたルドニツキの作品には、ポーランド西部国境地帯を放浪する語り手が登場する。ポーランド西部国境地帯出身作家でありながら、移動者でもある彼が、地域の「場所性」をどのように描き出すのかを紹介する。

 

15:45-17:45 第二パネル「空間のイメージ」

コメンテーター:久山宏一(東京外国語大学)、司会:小椋彩(東京大学)

 

報告者:奥山史亮(北海道大学)

題目:「文化参事官エリアーデがみた「ルーマニア」と「ポルトガル」」

ミルチア・エリアーデは、サラザール政権下のポルトガルにおいて、在リスボンのルーマニア大使館に文化参事官として勤務した。本報告では、ルーマニア文化をポルトガルに紹介するためにエリアーデが書いた資料から東(ルーマニア)と西(ポルトガル)に関する記述を抽出し、その特徴を明らかにする。

 

報告者:越野剛(北海道大学)

題目:「 ポーランド文学における「ベラルーシ派」―ヤン・バルシュチェフスキを中心に」

ポーランド語で『ベラルーシ幻想譚』(1844-46年)を書いたJan Barszczewskiはポーランドではマイナーだが、ベラルーシではよく名前を知られた作家である。ポーランド文学における東部地域(ベラルーシ)のイメージ、および現代ベラルーシにおけるバルシュチェフスキの位置づけについて考察する。

 

報告者:田中壮泰(立命館大学)

題目:「デボラ・フォーゲルの作品におけるユダヤ的モティーフについて」

戦間期ガリツィアで活躍した美学者兼詩人のデボラ・フォーゲル(1900-1942)は、ポーランドの作家ブルーノ・シュルツの恋人として、一部のシュルツ研究者にのみ知られる存在であったが、近年、彼女の作品に対する再評価の機運が高まりつつある。フォーゲルはポーランド語とイディッシュ語でものを書いた。その詩は西欧アバンギャルドの手法を積極的に取り入れ、主題も都会的なものが多い。しかし彼女はイディッシュ語使用者として、ユダヤの伝統あるいは「ユダヤ性」といった問題に無関心ではいられなかった。フォーゲルの作品から「西欧文化」を潜り抜けた上で「再発見」される<ユダヤ/東欧>のモティーフを読み解きたい。

 

17:45-18:15 全体討論

 

 

2012年3月16日(金) 《研究発表》

 

10:00-10:25 司会:久山宏一(東京外国語大学)

 

報告者:金沢 文緒(日本学術振興会特別研究員)

題目:「ポーランド国王としてのアウグスト3世―ベルナルド・ベロットの寓意画の考察―」

ベルナルド・ベロットが1762年にドレスデンで制作した政治的寓意画の対作品は、主題解釈や着想源などに関してまだ不明な点が多く残されている。これを受けて本発表では、作品の注文主であるザクセン選帝候フリードリヒ・アウグスト2世が当時アウグスト3世としてポーランド国王を兼任していた点に注目し、ザクセン=ポーランド連合の二重統治下における宮廷芸術という側面から改めて考察を進め、当時のポーランドの歴史的背景を考慮しながら作品の再解釈を試みる。

 

10:25-10:50 司会:橋本聡(北海道大学)

 

報告者:西原 周子(北海道大学大学院文学研究科歴史地域文化学専攻修士課程)

題目:「サヴァ・ムルカリによる表記システムと二重字の考察」

本年度に執筆した修士論文の一部から、サヴァ・ムルカリが『厚いイェルの脂肪』(1810年)で提唱したセルビア語の表記法について述べる。ムルカリはこの作品において、当時使用されていたキリル文字に対する評価と分類、およびそれに基づいたアルファベットの整理を行った。それに対し、ムルカリのアルファベットに残された二重字についての考察を行い、ヴーク・カラジッチによる正書法にどう繋がっていったかを論じる。

10:50-11:05 休憩

 

11:05-11:30 司会:阿部賢一(立教大学)

 

報告者:中村 寿(北海道大学大学院文学研究科博士後期課程)

題目:「〈ユダヤ的なもの〉を求めて:「プラハにおけるユダヤ的隔週新聞『自衛』」について」

「『自衛』 (Selbstwehr – Unabhängige jüdische Wochenschrift) 」は、1907年から1938年までプラハで継続的に発行されたドイツ語の学生シオニスト機関のための隔週新聞である。『自衛』は、『掟の門 (Vor dem Gesetz) 』を初めとするカフカの小作品を初めて掲載した場として、その重要性は以前から認められていたが、ユダヤ国民主義 (=シオニズム) 新聞としての『自衛』における言説そのものが検討されることはきわめて少なかった。本報告では、『自衛』の創刊後間もなくの記事を考察の対象とし、プラハにおけるドイツ語の学生シオニストが何を目指していたのかについて言及する。

 

11:30-11:55 司会:堤正典(神奈川大学)

 

報告者:橋本 聡(北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院)

題目:「EU東方拡大と超国家的言語政策」

ベルリンの壁崩壊以後のヨーロッパでは、新しい秩序と統合が模索されるなか、言語政策の分野でも国境を超えた共通の枠組み作りが推進されてきた。その過程でEUが東方拡大を選択したことは、ヨーロッパ共通の言語政策が輪郭を整える重要な契機になったといえる。そこでこの発表では、チェコやスロヴァキアといったEU新規加盟国が言語政策における「ヨーロッパ・スタンダード」をどのように受け入れ、その結果どのような変化が生じたのかを概観する。その際、「多言語性」対「単一言語性」ないし「民主主義」対「経済」、あるいは「超国家」対「国家」といった対立軸の推移に注目し、それぞれ前者を理念とするヨーロッパ共通の言語政策の成果を検証したい。

 

11:55‐12:15 全体討論

 

研究発表会(2012.3.15-16)報告

 

東京以外の会場で初めてとなる本会の研究発表会が2012年3月15日、16日の二日間にわたり、北海道大学スラブ研究センターにて開催されました。初日は、初めての試みとなるパネル発表が行なわれ、二日目は個別の研究発表が行なわれ、両日とも時間を延長して議論が展開されました。会場の設営から懇親会の手配にいたるまで、北大の橋本委員長および越野剛さんには大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。(阿部)

研究発表会2012年3月
研究発表会2012年3月

2012年6月23日(土)

《日本スラヴ学研究会発足記念シンポジウム》

【日時】: 2012年6月23日(土)
《シンポジウム》 14:00~18:15(予定)

【会場】: 東京大学本郷キャンパス法文2号館2階2番大教室

【プログラム】
14:00~14:05 開会の挨拶:沼野充義(東京大学教授)

14:05~16:00 第1部:「スラヴ学の礎を築いた人々」

司会:三谷惠子(京都大学)
・ 「ドブロフスキーとスラヴ学」 石川達夫 (専修大学教授)
・ 「スレズネフスキーとスラヴ学」 服部文昭(京都大学教授)
・ 「スティベルとスラヴ学」 森田耕司(神戸市外国語大学准教授)

16:00~16:15 休憩

16:15~18:10 第2部:「スラヴ諸語とその隣人たち ~ドイツ語、イディッシュ語~」
司会:西成彦(立命館大学)
・ 「二言語作家デボラ・フォーゲル:イディッシュ語とポーランド語の文学実験」 田中壮泰(立命館大学院生)
・ 「多言語の東欧ユダヤ世界 「ブンド」とイディッシュ語」 西村木綿(京都大学院生)
・ 「世紀転換期のプラハとユダヤ・ナショナリズム」 中村寿 (北海道大学院生)
・ 「両大戦間期ポーランド文学とドイツ文学」 加藤有子(東京大学助教)

18:10~18:15 閉会の挨拶:土谷直人(本会会長、東海大学教授)