講演会(2012.3.8)の報告

ピンセント氏との懇親会
ピンセント氏との懇親会

講演会(2012.3.8)の報告

 

2012年3月8日(木)午後4時より6時まで、早稲田大学早稲田キャンパス8号館501会議室において、科学研究費補助金基盤A「ヨーロッパ境界地域の歴史的経験とパトリア意識/市民権」(代表:篠原琢氏)と日本西スラヴ学研究会の共同主催のかたちで、下記の講演会が開かれた。

 

[講師]:Robert B. Pynsent (The School of Slavonic and East European Studies, University College London)

[講演題目]: A 1940 nationalist edition on a 1736 nationalist text

 

講師のロバート・B・ピンセント氏は、長年ロンドン大学スラヴ東欧研究学部で教鞭をとられ(現在は退職)、イギリスにおけるチェコとスロヴァキア文学研究の第一人者として広く知られた方である。一見したところ「謎かけ」のような講演題目は、バロック期のチェコ文学者O・F・J・デ・ヴァルトが、1736年に出版した説教集のテクストの一部を、チェコのバロック期文学の研究者ヨゼフ・ヴァシツァ(教会スラヴ語の専門家としても有名)が、ボヘミア・モラヴィア保護領期の1940年に再版したという史実を指している。このエピソードを軸として、文学テクストの政治利用という観点から、該博な知識に裏付けられつつ、チェコ文学史についての通説(バロック期の「暗黒(テムノ)」説)を覆す、まことに刺激的な議論が展開された。「アドヴァンスト・レベル向け」の高度な内容で、「温厚な英国紳士」を絵に書いたようなピンセント氏の、UCLでの講義を彷彿とさせるブリティシュ英語による講演と、それに続く質疑応答の2時間は、出席した7名のチェコとスロヴァキアの研究者にとって、得難い濃密な知的体験であった。なお本講演はピンセント氏の快諾を得て、『スラヴ学論集』の次年度号に掲載される予定であるので、ぜひ味読されたい。講演会終了は大隈記念タワー15階のレストラン「西北の風」で、午後9時すぎまで歓談が続いた。〔文責・長與〕