2017年度日本スラヴ学研究会研究発表会

2017年度日本スラヴ学研究会研究発表会

 

【日時】2018 年3 月29 日 木 9 時45 分 ~ 18 時00 分

【会場】 東京大学 本郷キャンパス 法文1 号館 113 教室 (下記添付のPDFファイルに地図が掲載されています)

 

プログラム

 

開会の挨拶 阿部賢一(企画編集委員長、東京大学)   

                     

第Ⅰ部 研究発表(9:50 ~ 12:00) 

研究発表Ⅰ(9:50 ~ 10:20)  司会:井上暁子(熊本大学)

 三田順(北里大学)

 「地詩学から見るケルンテンのスロヴェニア文学」

研究発表Ⅱ(10:20 ~ 10:50)  司会:田中柊子(静岡大学)

 須藤輝彦(東京大学・院)

 「ミラン・クンデラにおける歴史と運命」

研究発表Ⅲ(11:00 ~ 11:30)  司会:岡本佳子(東京大学)

 太田峰夫(宮城学院女子大学)

 「ハンガリー民衆劇が1880 年代のツィンバロムの普及に果たした役割について」

研究発表Ⅳ(11:30 ~ 12:00)  司会:菱川邦俊(近畿大学)

 ヨフコバ四位エレオノラ(富山大学)

 「メディア言語から観たブルガリア語の変化」

                     

第Ⅱ部 パネル発表(13:10 ~ 14:35)  

「バルカン・スラヴ語における接語重複の諸相―文法化、地域的拡散、類型論」

“Various Aspects of Clitic Doubling in Balkan Slavic: Grammaticalization, Areal Diffusion and Typology”

発表Ⅰ

 Sofija Miloradović(セルビア科学芸術アカデミー・セルビア語研究所)

 «Именная редупликация в сербских народных говорах – статус, условия реализациии и балканский контекст»

発表Ⅱ

 菅井健太(筑波大学)

 “Clitic Doubling in the Bulgarian Dialects: From the Typological Perspectives”

コメンテータ 野町素己(北海道大学)

司会    ヨフコバ四位 エレオノラ(富山大学)

                     

第Ⅲ部 特別講演(14:45 ~ 15:45)

Jasmina Grković-Mejdžor(ノヴィサド大学)

“Future Tense in South Slavic: Diachrony and Typology”

司会 野町素己(北海道大学)

                   

第Ⅳ部 ミニシンポジウム(16:00 ~ 18:00)

「中東欧の声楽作品を聴く─音楽、言語、歴史をつなぐ鑑賞の手引き」

イントロダクション 岡本佳子(東京大学)

講演 内藤久子(鳥取大学)

「チェコ国民オペラの創造 ─ B. スメタナの喜歌劇 《売られた花嫁》にみる『チェコ性』のイメージ」

報告1 松尾梨沙(東京大学・院)「ショパンとヴィトフィツキ」

報告2 岡本佳子(東京大学)「コダーイ《ハーリ・ヤーノシュ》舞台版と組曲版の比較」

コメンテータ 阿部賢一(東京大学) 

ディスカッション

 

閉会の挨拶 沼野充義(本会会長、東京大学)

 

発表要旨

 

第Ⅰ部 研究発表

三田順「地詩学から見るケルンテンのスロヴェニア文学」

本発表ではオーストリアのケルンテン州出身のスロヴェニア語、ドイツ語二言語作家、マーヤ・ハーデルラップのドイツ語長編『忘却の天使』(2011)を取り上げる。少数民族としてのケルンテンのスロヴェニア人の歴史が作者の家族三世代に重ね合わせられて描かれた半自伝的本作を、地詩学というアプローチから、同じくケルンテンの歴史を背景としたオーストリアのドイツ語作家の作品と比較しながら考察する。

 

須藤輝彦「ミラン・クンデラにおける歴史と運命」

ミラン・クンデラ作品における歴史、と言った場合、考えるべきは大きく分けて二つある。第一に、クンデラが、作中人物たちの生きる「背景としての歴史」をどのように描いたかということ。第二に、クンデラ自身がエッセーで、また小説のなかで頻繁に言及する〈歴史〉という概念が、どのようなものであるかということだ。本発表はおもに後者に着目し、それを同じくクンデラの小説作品における「運命」のあり方と関係づけながら、考察していく。

 

太田峰夫「ハンガリー民衆劇が1880 年代のツィンバロムの普及に果たした役割について」

19 世紀後半から20 世紀初頭にかけてのハンガリー中間層の間で、打弦楽器ツィンバロムが自国の「国民楽器」として愛奏されていたことはよく知られる通りである。本発表では、当時絶大な人気を誇っていたハンガリーの民衆劇に注目し、この楽器の普及運動がじつは民衆劇場を中心とする民衆の「国民化」の流れとも密接に関わっていたことをレパートリーの共通性などをもとに、具体的に明らかにしていく。

 

ヨフコバ四位エレオノラ「メディア言語から観たブルガリア語の変化」

近年、社会の変化が言語にも大きな影響を及ぼしている。言語の変化が明確に現れているのはメディアの言語である。メディアと言語が相互的に影響し合い、口語的現象がいちはやくメディア言語に取り入れられ、また、メディアの言語的スタイルが口語に広がるということが起きている。最近のブルガリアのメディア言語の最も大きな問題として指摘できるのは、メディア言語の口語化および俗語化である。本発表では、メディア言語の口語化の次の特徴を取り上げ、その中、特に③に注目して考慮する:①外来語/新語の増加、②ムードの使用(直説法と伝聞法の使い分け)、③定冠詞の使用の乱れ。

 

第Ⅱ部 パネル発表

「バルカン・スラヴ語における接語重複の諸相―文法化、地域的拡散、類型論」

“Various Aspects of Clitic Doubling in Balkan Slavic: Grammaticalization, Areal Diffusion and Typology”

接語重複(clitic reduplication/doubling) は、バルカニズムの一つに数えられ、バルカン・スラヴ語(Balkan Slavic)においても広くみられる現象である。方言レベルでみると、マケドニア南西地域に分布する諸方言においてもっとも文法化されていが、そこから地理的に離れるにしたがってそのあらわれはより周辺的なものとなることが知られている。本パネル発表では、北西方向に広がるセルビア語南東方言と、北東方向に広がるブルガリア語方言のデータをもとに、接語重複のふるまいの共通点や相違点を明らかにすることで、バルカン・スラヴ語における同現象の諸相を描き出すことを目的とする。

 

第Ⅲ部 特別講演

Jasmina Grković-Mejdžor(ノヴィサド大学教授、セルビア学士院会員)

プロフィール:スラヴ語を中心とした歴史言語学の専門家で、古代教会スラヴ語、古期セルビア語、スラヴ比較文法などで成果を挙げている。言語類型論に精通し、その理論を応用した通時的な統語論研究は、通時的スラヴ語研究に新たな展開をもたらしている。国内外で広く活躍され、2013 年までに7 冊の単著、6 冊の編著、100 を超える論文を発表している。

“Future Tense in South Slavic: Diachrony and Typology”

(要旨)

This contribution deals with the creation of the future tense in South Slavic, in general Slavic perspective. It is shown that the process was gradual, resulting from both language-internal and contact-induced processes. The internal tendency to create a form denoting a future action/state was part of the change of an earlier aspect verbal system to a tense verba l system. Late Common Slavic still did not have the future tense but instead s everal universally available possibilities to denote a future action/state, as witnessed by Old Church Slavonic and early Slavic vernaculars (the perfective present, chotěti ‘want,’ iměti ‘have,’ (-)čęti ‘begin’ + infinitive, byti ‘be’ + infinitive/participle). The language contacts in the Balkans gave prominence to one of them, reinforcing the creation of the ‘want’ future type in the majority of languages and dialects, except Slovene and Croatian Kajkavian, in the northwest, which, having the ‘be’ future, belong with East and West Slavic languages. This shows that in periods of system instability due to a major internal c hange, language contact may induce a choice among several inherent competing strategies.

The presentation addresses the following questions: 1) typology of South Slavic future: a) the ‘be’ future (Slovene, Kajkavian), b) the ‘want’ future (Čakavian, Štokavian), c) the split ‘want’ / ‘have’ systems (Bulgarian, Macedonian); 2) grammaticalization of the ‘want’ future type: ambiguity of the ‘want’ + infinitive construction, desemanticization, morphological and prosodic erosion of ‘want,’ e.g. Serbian hoću > hću > ću); 3) the time frame of the changes; 4) the typology of ‘want’ future patterns, including their areal gradience: a) the zone with infinitive (e.g. Serbian ću + infinitive), b) the zone with the present tense, where the loss of the infinitive triggered further changes (e.g. Bulgarian: decl. šta da + present tense > indecl. šte da + present tense > šte + present tense). We also exemplify how the contemporary diatopic variation reflects diachronic developmental stages, which is si gnificant both from the theoretical and methodological standpoint.

 

第Ⅳ部 ミニシンポジウム

「中東欧の声楽作品を聴く─ 音楽、言語、歴史をつなぐ鑑賞の手引き」

イタリアやドイツを主流とする声楽作品のなかで、中東欧の歌曲やオペラはどのような位置付けにあるのでしょうか。本企画は19 世紀─20 世紀のポーランド、チェコ、ハンガリーを中心に、日本ではあまり馴染みのない、中東欧地域の声楽作品を紹介することが目的です。当該地域で各国の言語を用いた歌曲やオペラの作曲が本格化するのは19 世紀前半、それから20 世紀にわたり作曲技法の変遷とともに多様化を見せていきました。ポーランド分割や二重君主国体制、そして第一次世界大戦後の独立などの歴史を踏まえると、常に西洋音楽として汎ヨーロッパ的な文脈で創作・受容される側面や、時に国民性を打ち出そうとする一面、そのさらなる反動など、それぞれの作曲者の創作の特徴が見えてきます。言葉や物語性をもつ声楽作品には、音楽はもちろん、言語や歴史的背景など聴くための手がかりが様々あります。音源や映像を用いながら中東欧の声楽作品の事例とその研究動向/成果を紹介し、様々な方面へ議論を開くためのミニ・シンポジウムです。

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2017年度日本スラヴ学研究会研究発表会プログラム発表要旨
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