2021年度日本スラヴ学研究会研究発表会

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2021 年度の本会研究発表会をオンラインにて開催いたします。参加を希望される方は下記の URL もしくは QR コードより事前にお申し込みください。

 

【開催日時】

2022年3月30日(水)14:00–17:00(オンライン開催)

 

【プログラム】 

14:00-14:10 開会のあいさつ

長與進(本会会長・早稲田大学名誉教授)

 

14:10-14:50 個人発表

茂石チュック・ミリアム(スロヴェニア共和国大使館)

「ボリス・パホル『ネクロポリス』」

*司会:奥彩子(共立女子大学)

 

15:00-16:40 パネル発表「鉱山の光景」

(1) 阿部賢一(東京大学)

 「ウランの記憶:ヤーヒモフの事例」

(2) 中村唯史(京都大学)

 「グロスマンの短編『生』に見る炭鉱と労働者の連帯の神話」

(3) 菅原祥(京都産業大学)

 「自然としてのボタ山:ポーランド、シロンスク地域におけるその意味づけ」

(4) 小椋彩(東洋大学)

 「モラルの不安の映画と鉱山労働者」

 

 *司会:安達大輔(北海道大学)、討論者:越野剛(慶應義塾大学)

*後援:科研費基盤 (B) 21H00518

                 「ロシア・中東欧のエコクリティシズム:スラヴ文学と環境問題の諸相」

 

16:40–16:50 閉会のあいさつ

石川達夫(専修大学)

 

【連絡先】

日本スラヴ学研究会事務局  slav@jsssll.org(慶應義塾大学・ 越野剛)

 

【参加申込】

 参加ご希望の方は以下の URL もしくは QR コードより事前申込をお願いいたします。

https://keio-univ.zoom.us/meeting/register/tZYrf-mppzkrH9MfWbJvN-VMZ2YXALXN7t5f

 



【発表概要】

茂石チュック・ミリアム(スロヴェニア共和国大使館)

「ボリス・パホル『ネクロポリス』」

 ネクロポリスとは巨大な墓地または埋葬場所のことである。この作品を書いたボリス・パホルは1913年にトリエステに生まれ、1944年から一年超にわたってナチスの強制収容所を経験した。作家生活においては長編小説、短編小説などを書き、主なテーマはファシズム、ナチズム、民族意識、トリエステ、そして強制収容所における経験である。第二次世界大戦時にはユダヤ人の組織的虐殺が行われたことが知られているが、パホルが描いているのは自分の周りにいたスラヴ人、フランス人、イタリア人などである。小説は個人的な経験を中心に描かれているが、パホルは帰らぬ人の代わりに語ることをも使命としている。非常に滑らかで重くない言葉を用いながらも、その内容においては人間性が奪われた不条理な日常が語られている。

 

パネル発表「鉱山の光景」

*後援:科研費基盤 (B) 21H00518「ロシア・中東欧のエコクリティシズム:スラヴ文学と環境問題の諸相」

 

 環境問題に対してスラヴ語文化圏の文学・文化が果たしうる役割や機能について検討するプロジェクトの一環として、本ワークショップでは「鉱山」とその周辺の表象に着目、チェコ・ロシア・ポーランドの文学と映画を出発点に、社会・自然環境問題と芸術文化の関係について、ひろく検証の場をひらくことを目指す。

 

阿部賢一(東京大学)

「ウランの記憶:ヤーヒモフの事例」

 銀やウランの採掘で知られるヤーヒモフを舞台にしたレンカ・エルベの小説『ウラノヴァ』(2020)を参照しながら、社会主義期の鉱山、労働、そして記憶がどのように交錯しているか、検討する。

 

中村唯史(京都大学)

「グロスマンの短編『生』に見る炭鉱と労働者の連帯の神話」

 ソ連期のロシア語作家ワシリー・グロスマン(1905-64)が、なお〈社会主義リアリズム〉の規範に忠実だった43年に書いた短編『生 Жизнь』は、ナチ・ドイツの侵攻で廃墟と化したドネツク地方の炭鉱労働者と赤軍パルチザンの共闘の物語だが、労働者間の連帯、労働者と炭鉱設備や光景との連帯を、ほとんど神話的な筆致で描いている。20世紀前半のロシアにおける「炭鉱=連帯」表象の起原と成立過程を推定し、日本との比較も一部試みる。

 

菅原祥(京都産業大学)

「自然としてのボタ山:ポーランド、シロンスク地域におけるその意味づけ」

 「ボタ山」は伝統的に炭鉱業をはじめとした鉱工業が発達してきたポーランドのグルヌィ・シロンスク地域の風景を構成するもっとも特徴的な要素のひとつである。それゆえボタ山は、重工業による自然破壊の象徴であると同時に、シロンスク人のアイデンティティを象徴する景観としてもしばしば言及されてきた。本報告ではシロンスクのボタ山が人々によっていかなる意味を与えられてきたのかについて、映画におけるボタ山表象を手がかりに考察を行う。

 

小椋彩(東洋大学)

「モラルの不安の映画と鉱山労働者」

 1970年代後半から80年代初頭、社会不安が増大したポーランドで時代の空気を色濃く反映した「モラルの不安の映画」、および同時期のドキュメンタリーフィルムにおける鉱山にまつわる一連の表象から、「労働環境」としての鉱山が担う意味を検討する。