シンポジウム「スラヴ世界の SF Part 2」および講演会「『亡命文学』から目が離せない時代」開催

 

日本スラヴ学研究会 総会・シンポジウム・講演会

 

2022 年 6 月 11 日(土)13:50–18:10

慶應義塾大学(日吉キャンパス)来往舎 2 階中会議室

※参加無料、オンライン (Zoom) からの参加可

 

12:30–13:40 日本スラヴ学研究会総会(会員のみ)

 

13:50–18:10 シンポジウム・講演会

13:50–13:55 開会挨拶 長與進(本会会長・早稲田大学名誉教授)

 

13:55–16:55 第一部:シンポジウム

スラヴ世界のSF Part2 ──スタニスワフ・レムとその周辺──

司会:貞包和寛(日本学術振興会)  討論者:菅原祥(京都産業大学)

 

13:55–14:25 芝田文乃(ポーランド語翻訳者)

「スタニスワフ・レム日本語翻訳史概説」

 

14:25–14:55 関口時正(東京外国語大学名誉教授)

「『インヴィンシブル』の余白に──題、民族、女性、銀河系中心主義、法華経」

 

15:05–15:35 富重聡子(一橋大学大学院博士後期課程)

「映画『イカリエXB1』における「コンタクト」──映像と音の観点から」

 

15:35–16:05 若島正(京都大学名誉教授)

「レムとSF」

 

16:15–16:55 討論とリプライ、質疑応答

 

 

17:05–18:05 第二部:講演

「『亡命文学』から目が離せない時代 」(17:05–17:45)

講演:西成彦(立命館大学)

 

17:45–18:05 質疑応答  司会:越野剛(慶應義塾大学)

 

18:05–18:10 閉会挨拶:石川達夫(専修大学)

 

オンライン参加方法:下のQRコードまたはこちらのURLより参加登録

https://keio-univ.zoom.us/meeting/register/tZMud-2pqzgpGNXHsYtNh5SZkWutIohIG6zN

 

対面参加方法:事務局(slav@jsssll.org)まで事前申込(6月4日締切)

※対面参加は人数制限あり(会員優先、非会員は先着順)

 

← 参加申込用 QR コードはこちらです。


 

 

発表概要

 

芝田文乃(ポーランド語翻訳者)

「スタニスワフ・レム日本語翻訳史概説」

 ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの小説がこれまでどのように日本語に翻訳されてきたか、年代別にその変遷を追うとともに、現在刊行中の国書刊行会〈スタニスワフ・レム・コレクション〉第Ⅱ期をその歴史のなかに位置づけ、読みどころを紹介します。また、レムが少年時代をすごした故郷ルヴフ(現ウクライナのリヴィウ)の思い出の場所を写真でたどります。

 

関口時正(東京外国語大学名誉教授)

「『インヴィンシブル』の余白に——題、民族、女性、銀河系中心主義、法華経」

 私も若い頃からレムの文章を多少は読んだり訳したりしてきたが、専門とは言えない。今回はなるべく責任が持てるように発言の範囲を限定し、自分が実際に『インヴィンシブル』という小説を訳しながら疑問に思ったり感じ入ったりしたいくつかの点にしぼって紹介し、テクストがはらむ重要な問題を皆さんとともに考える材料としたい。一例をあげれば、宇宙船と主人公ロアンの両方に関わると思われる形容詞/名詞の題 Niezwyciężony の二重性がある。

 

富重聡子(一橋大学大学院博士後期課程)

「映画『イカリエXB1』における「コンタクト」──映像と音の観点から」

 映画『イカリエXB1』(1963年)は、スタニスワフ・レムの小説『マゼラン雲』(1955年)を元にして、映画監督インドジヒ・ポラーク(1925-2003)と脚本家パヴェル・ユラーチェク(1925-2003)が共同で脚本を執筆し、ポラークの監督のもと、チェコスロヴァキアで製作された。本発表では、この映画の映像と音のあり方を考察し、レムの書いた「コンタクト」がどのようなものとして立ち現れているかを論じる。

 

若島正(京都大学名誉教授)

「レムとSF」

 英訳版評論集 Microworlds に収められているレムのSF論は、アメリカのSF業界に対する痛烈な批判にもなっていた。レムが考えるところの可能性を秘めたジャンルとしての SFが取るべき姿と、アメリカで大きな読者層を獲得するに至ったSFとのあいだにはどのような差があったか、レムの批判はどのような間接的な影響をアメリカSFに与えたか、といったSF批評の諸問題を、SF史の流れの中で考えてみたい。

 

西成彦(立命館大学)

「『亡命文学』から目が離せない時代 」

 沼野充義さんの『亡命文学論』(作品社、2002)がこのほど「増補改訂」された。ところが、その刊行がロシア軍のウクライナ侵攻、そして大量のウクライナ難民が国外に生活圏を移す新しい「難民の時代」の到来とぴったり重なった。 私や沼野さんは、冷戦のさなかにロシア・東欧文学にとりつかれた世代に属しており、当時は「亡命文学」を抜きにしてロシア・東欧文学を語ることなどありえなかった。それがいつしか「世界文学」の全体が「越境の文学」としての特徴を強く示すようになったのだが、あらためて「亡命文学」から目を背けてはいられない時代が来た。講演では、こうした時代の推移をお話ししたい。

 

主催:日本スラヴ学研究会

共催:

科研費基盤(B)20H01587「冷戦期における時間的・空間的想像力および生活空間の変容をめぐる比較研究」(代表:菅原祥)

科研費基盤(B)22H00652「境界地域における幻想文学の比較研究」(代表:三田順)

 

問い合わせ:日本スラヴ学研究会事務局 越野剛(slav@jsssll.org)